正しい紳士の愛し方
ショッピングモールは家族連れやカップル、友だち同士などで賑わっている。
背が高く端整な顔立ちの彼は、歩いているだけでもけっこう人の目に入る。
「最近、休みらしい休日が無くてこういう場所来てなかったけど、やっぱり賑やかだな」
「そうだね。あっ……大和さん、これ見て!」
樹のはしゃぎようもひとしおだ。
パステルカラーをベースにしたファンシーな店作りの雑貨店で、樹は大きなウサギのぬいぐるみに飛びついた。
背丈は二、三歳の子どもほど。
「そのぬいぐるみ、樹ちゃんにすごく似合う」
「ホント!?」
周りから見れば、恋人同士に見えなくもない微笑ましさ。
その雰囲気を察してか、店の奥から店員が「この子、新しく入荷したばかりなんですよ~。可愛いてしょ~」と張り付けたような笑顔と共に近寄ってきた。
樹が抱くそのぬいぐるみはこの雑貨店の目玉商品であることは誰の目にも明らか。
店員も営業スマイルを差し向けて売りたいわけだ。