正しい紳士の愛し方
「買ってあげようか?」
彼は樹に問いかけた。
まるで、スーパーのお菓子でも買う時のような気軽さで。
「い、いいよ!ほら、行こう」
樹は慌てて断り、ぬいぐるみを元の位置に戻す。
彼の背中を押して雑貨店から距離を置き、チラリと横目で店舗の様子を窺(うかが)うと店員はにこやかに笑って「ありがとうございました~」とお辞儀した。
「気に入ってそうだったからプレゼントしようと思ったのに……」
彼は不服そうな顔をして樹を見る。
「あのぬいぐるみ、いくらするか知ってる?」
「さぁ、見てないから……」
首を横に振る大和さんはのんきなものだ。
樹は思わず深い溜め息をついた。
「二万円だよ。ぬいぐるみで二万円!」
数字の部分をやけに強調する。
どんなに気に入ってもお金をかけていい部分じゃない。