正しい紳士の愛し方


樹がカウンターの方に目を向けると、受付スタッフは気まずそうにそれぞれの仕事に戻った。



しまった……、似合うのか……。



樹はここに来て自分の言葉を後悔した。


彼にかかればコテコテのコスプレ衣装も様になってしまう。


むしろ、貴重な一枚になること間違いない。


「うわ……種類多いな」


彼はプリクラコーナーに入った瞬間、目の前に広がる景色の感想を吐露する。


そして、女性中心の空間で高津 大和という人間は異様な存在感を放つ。


散り散りだった女性たちの視線が彼に注がれた。



女豹(めひょう)たちが狙ってる……。



美味しそうな草食動物でも見るような瞳(め)


樹の事なんて はじめから眼中に無い。


「あっ……あっちの種類、オススメって書いてあるよ!早く行こう」


樹は注目を集める彼をさっさと隠してしまおうと、広い背中を押して足早にプリクラ機のカーテンの中へ。


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