正しい紳士の愛し方


「じゃあ、プリクラ代金のかわりにアタシが撮りたいポーズをひとつやらせて?」


「そんなのでいいの?」


「うん。どんなポーズでもやってもらうから」


樹の言葉に彼は「怖いなぁ……」と苦笑い。


「でも、楽しそうだからのった!」


二人の話がまとまったところで、樹はくずしたはかりの小銭をプリクラ機に投入した。


プリクラ機はすぐに音声案内を開始する。


「メニューは……一番基本のやつで、明るさはコレ」


樹は次々出される選択肢を慣れた風に選んでいく。


それを横で見ている彼は、小さな拍手を送りながら「さすが、若者」と感心する。


いかにも自分は年寄りだと言わんばかり。


可笑しくてちょっと笑った。


「あんまり変わんないじゃん」


「変わるよ。二十代と三十代だと見えてるものが違うから」


彼は楽しそうに笑っている。


たわいもない日常の会話。



< 40 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop