正しい紳士の愛し方
「じゃあ、プリクラ代金のかわりにアタシが撮りたいポーズをひとつやらせて?」
「そんなのでいいの?」
「うん。どんなポーズでもやってもらうから」
樹の言葉に彼は「怖いなぁ……」と苦笑い。
「でも、楽しそうだからのった!」
二人の話がまとまったところで、樹はくずしたはかりの小銭をプリクラ機に投入した。
プリクラ機はすぐに音声案内を開始する。
「メニューは……一番基本のやつで、明るさはコレ」
樹は次々出される選択肢を慣れた風に選んでいく。
それを横で見ている彼は、小さな拍手を送りながら「さすが、若者」と感心する。
いかにも自分は年寄りだと言わんばかり。
可笑しくてちょっと笑った。
「あんまり変わんないじゃん」
「変わるよ。二十代と三十代だと見えてるものが違うから」
彼は楽しそうに笑っている。
たわいもない日常の会話。