正しい紳士の愛し方


歳も離れてて、見えているものも違う。


社会的地位にも差があって、職業も別々。


一向に交わらない平行線を樹は強く感じた。


「変わんないから……」



なにも変わらない。



そう自分自身にすり込むように深く静かに口にする。


彼も樹の気持ちを全く知らないわけではない。


自分とどうありたいのか……少しは分かっているだろう。


「ほら、次の画面出たよ。もうすぐ撮影だろ。樹ちゃん、笑顔だよ……笑顔」


大和さんの長くてたくましい腕が樹の肩を抱く。


スーっと黒目をスライドさせただけで彼のことが視界に入ってしまう距離。


「う、うん……」



撮影……



撮影……



撮影……



三秒前からされるカウントダウン。


二秒と一秒の中間、樹はカメラに視線を移して精一杯表情を作った。


機械が喋る軽いノリとは全く異なる緊張感。


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