正しい紳士の愛し方
一撮影終えて、肩を抱く彼の腕がソッと離れていく。
糸で吊るされたように身動きができなかった樹の体からスーッと力が抜けた。
息つく間も無く次の撮影。
ニポーズ目から先はピースサインなど普通のポーズで。
そして、とうとう最後の撮影になった。
“自分が撮りたいポーズをひとつやらせてほしい”
そうお願いしたのは樹自身なのになかなか実行に移せない。
我ながらずいぶん臆病者だと思う。
「好きなポーズ、決めた?」
樹の突拍子もない提案を進めてきたのは、意外にも大和さんだった。
「う、うん。あのね……前向いたままでいいから目瞑って?」
「分かった」
彼は樹の言う通りに正面を向いて目を閉じる。
「……」
「……」
当たり前となった三秒前のカウントダウン。