正しい紳士の愛し方
シャッターがきられる瞬間、樹は彼の頬にチュッと唇を寄せた。
肩に添えられた手もすぐに離して、何事もなく撮影を終える。
大和さんはゆっくり目を開けた。
「いい写真が撮れたんじゃない?」
彼がそう言うと、画面にさっき撮ったばかりの二人の姿が写し出される。
樹の顔は燃えるように熱くなって、うんともすんとも言えない。
「全部の写真から何枚か選ばないといけないな。樹ちゃん、どれがいい?」
「アタシが選んでいいの?」
「もちろん」
今まで撮影した全ての写真が一覧で表示される。
元の素材がいいからか、大和さんは悔しいくらいに写真うつりが良い。
自分の表情だけ気にしながら写真選びをしても何の問題も無いほど。
樹はタッチパネルに触れて写真を選んでいく。
あと一枚選ぶことが出来る。
最後に撮ったあのカットは未選択のまま。
見れば見るほど気恥ずかしい。
大胆なことをしたと思う。