正しい紳士の愛し方
「うん」
大和さんは「ありがとう」と言って、迷わず最後に撮影した写真を選択した。
「あっ……それは……」
樹がなにか言い出す前に決定ボタンが押される。
一度は破棄してしまった選択権。
今更どうこう言える立場ではなかった。
「出来上がりが楽しみだ」
大和さんは楽しそうに笑ってプリクラ機から出て行った。
樹もその後に続く。
専用の場所で写真に思い思いのメッセージやアレンジを加え、それが終わるといよいよ出来上がりを待つばかり。
二人の時間が初めて形となって手元に残る。
嬉しさと緊張で心臓がドキドキした。
印刷を待っているたった数分が無限の時のように感じられる。
カシャン――…
出来上がったプリクラが出口に落ちてくる音。
大和さんは長身の体を屈めてそれを取ってくれた。