正しい紳士の愛し方


「樹ちゃん?急にどうした……?」


大和さんは困っている。


表情を確かめなくても、樹には容易に想像ができた。


「今夜は大和さんと一緒にいたい……」


広い背中に軽く顔を埋めて言う。


言葉がこもってハッキリしない。


「明日も仕事だろう?」


「うん。でも、朝早く帰ればいいし……ってダメだよね」


ワガママだって百も承知。


大和さんにだって都合がある。


樹はカッターシャツを握る力を緩め、彼の拘束を解いた。


「そうだね、色んな意味で駄目かもな」


「色んな意味?」


「いや……こっちの話。なぁ、樹ちゃん?」


大和さんは樹の方を向いて視線を合わせる。


「そんなに俺と一緒にいたい?」


樹は「うん……と素直に頷いた。


彼は垂れたままの小さな頭を優しく撫でて「分かった」と願いを聞き入れた。


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