正しい紳士の愛し方
到着したエレベーターには艶やかな和服姿の女性が一人乗っていた。
大和さんの姿を見つけた彼女は、品の良い笑みを浮かべて白くて細い手を優雅に振る。
「あら、大和じゃない。久しぶり」
「百合(ゆり)……」
外見にピッタリな名前。
それこそ、白百合のような女性。
「こんな場所で会うなんて偶然ね」
「いつ日本に帰って来たの。ニューヨークにいたんじゃ……」
いつも冷静で、女性に対してスマートな大和さんが珍しく動揺しているように見えた。
「昨夜着いたばかりよ。日本でちょっと用事があったから」
「そう……なんだ。連絡してくれれば良かったのに」
「ごめんなさい。落ち着いたらしようと思っていたの。それで……こちらの可愛い女の子はどちら?」
百合さんは大きな瞳で樹を捉える。
目が合うだけでドキッとしてしまう。
「こ、小林 樹です。はじめまして」
樹はカクッと身体を倒して自己紹介する。
いつまでも目を合わせていてはビー玉のような綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうだった。