正しい紳士の愛し方
「はじめまして。桐嶋 百合(きりしま ゆり)と申します」
彼女は優雅にお辞儀した。
同じ“女”であるはずなのに、挨拶ひとつでこうも差が出てしまうのが残念すぎる。
「大和の彼女?」
「えっ!?いや……そんなんじゃなくて……じゃなくて……えっと……」
否定すれば何様って感じで。
だからといって肯定もできなくて、樹は口篭った。
「ガールフレンドだよ。この子、奏の彼女の親友なんだ」
「そうなの?恋人じゃないの……残念だわ」
近づくとフワッと舞う花の香り。
キツ過ぎないとても柔らかな香水。
「ところで、海外に行ったままずっと音沙汰無しだったのに、急に戻ってきて用事ってなんなの?」
「うん、それはね……」
百合さんは言い辛そうに目線を泳がせ、少し間を置くと「私、結婚するの」と告げた。
「結婚……」
大和さんは彼女の言葉を復唱する。
心からの驚きと動揺に満ちている。
「世界には四十過ぎた女でも貰ってくれる人がいるものね」
無邪気に頬を染めながら話す百合さん。
とても、四十歳過ぎには見えない。