正しい紳士の愛し方
自分がもし男なら、彼女がたとえ何歳でも結婚したいと思えるだけの美しさを持っている。
いやいやいやいや……何考えてるんだ、アタシ。
「おめでとうございます」
彼の事も考えて、樹は少し遠慮気味にお祝いを述べた。
「ありがとう」と喜ぶ彼女の後ろに色鮮やかな花が飛んでいるようにさえ見える。
「そうだわ。これ、月末にあるパーティーの招待状。良かったらいらして?」
「でも……」
「大和のお友だちともっとお話ししてみたいの。予定が空いていたらで構わないから」
百合さんは招待状を樹の手に握らせ、コクンと首を横に倒すと「ねっ?」と微笑んだ。
女神のようなその微笑に凡人が逆らえるはずもなくて、行けるか分からない招待状をうっかり受け取ってしまった。
「百合、俺たちそろそろ……」
「そうね、引き止めちゃってごめんなさい。また、ゆっくりね……」
「じゃあ……」
大和さんは短く挨拶を済ませると、先にエレベーターへ乗り込んだ。
「さようなら」
樹はペコッと頭を下げて、彼の後に続く。