正しい紳士の愛し方
「先、シャワーどうぞ」
「でも……」
"シャワー"という言葉に樹の心はドキッとする。
大和さんの口から言われると、どういうわけかひどく恥ずかしくてイケナイ気分にさせられる。
「それとも、俺と入る?」
「えっ‼︎」
「冗談だよ」と大和さんは悪戯っぽく笑う。
樹はそれが冗談だったことにホッと胸を撫で下ろした。
「適当にしてるからゆっくりと入るといいよ」
「うん、じゃあ……」
彼の言葉に甘えることにしたい樹だったが、百合さんと会ってからの小さな様子の変化が気掛りだった。
バスルームの扉を開ける前、一度だけ大和さんの方を振り返る。
大きな窓から窺える夜景を眺める彼の横顔がなんだか切なくて……。
声をかけられないままバスルームへ入っていく。
脱衣場の明かりをつけると広い鏡が樹自身を映し出す。