正しい紳士の愛し方


バスケットの中にタオルとルームウェア、アメニティーグッズが丁寧に置かれている。



こんな時、お風呂上りにはホテルのルームウェアを着るのが正しいのか。



それとも、今着ている服をそのままがいいのか。


経験不足が浮き彫りになる瞬間。


「とにかく、まずお風呂……」


樹は身につけていた洋服を全て脱ぐ。


鏡に映るまっさらな姿の自分。


未だ、誰にも見せた事がないありのままの姿。


今夜、はじめて他人に見せるかもしれない。


そうなったとしても、大好きな人が相手なら後悔は無い。



たとえ、彼が誰を愛していたとしてもーー…



バタンッ……!


樹がいるバスルームの外で動きがあった。


部屋の扉が開閉される音。


ありがとう……と彼が誰かと会話をしている声が微かに聞こえる。


声を聞くと途端に恥ずかしくなって、樹は隠れるようにして浴室へ飛び込んでいった。


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