正しい紳士の愛し方


お風呂上がり、樹は自分の洋服を着てバスルームを出ることにした。


一度はルームウェアを着てみたが、自分と彼の温度差を想像して怖じ気づいた。



変な期待した勘違い女だって見られたくない。



大和さんにはいつも“可愛いね”って言われていたい。


「おかえり、樹ちゃん」


「うん」


樹は少し水気が残る髪の毛を真っ白なタオルで撫でながら頷いた。


「ごめん、先にやってる」


大和さんは白ワインの注がれたグラスを軽く掲げてみせる。


ゆらゆらと揺れるお酒を見てうん……と頷くと、彼は「樹ちゃんも飲む?」と誘いをかけた。


「アタシは大丈夫。ワインは悪酔いしちゃうから」


「そっか。フルーツは?」


ワイン瓶の横には苺やマスカットなど、色とりどりのフルーツの盛り合わせ。


大和さんがルームサービスで頼んだものだ。


「いいの?」


「いいよ、おいで」


彼は樹に向かって手招きする。


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