正しい紳士の愛し方
手招きに吸い込まれるかのように彼の横に座った。
「いただきます」
樹は巨峰をひとつ手にする。
大粒でキラキラしたそれは、お金持ちのマダムが身につける宝石みたい。
本物の宝石ではないからフニフニと柔らかい。
パクッと口にするとひんやりとした後に甘酸っぱさが広がった。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
樹の幸せそうな表情を見ると、大和さんは優しく微笑んでワインを一口。
「大和さんは食べないの?」と樹は問う。
フルーツを頼んだのは大和さんだ。
それなのに、彼がこれらに手をつけた形跡はない。
「そうだね。樹ちゃんが食べさせてくれるなら食べてもいいかも」
「酔ってるの?」
「……かもね。はい、どうぞ」
大和さんの口が目の前で開く。