正しい紳士の愛し方


ピリピリピリピリ……



里奈さんとの会話途中、樹のスマホが音を立てる。


電話の着信音。



大和さん……。



着信表示を確認して樹の心はグラグラッと揺れる。



コンパなんて断れって言ってるの……?



同時に昨夜のことも頭を過ぎる。


そんな風に彼が思うはずない。


終わりにするって決めたんだ。


樹は都合の良い空想を振り切ってスマホをカバンの奥に追いやった。


「鳴ってるけど……いいの?」


どもったように鳴り続ける着信音。


気遣わし気な里奈さんが問うが、樹は「いいの」と首を横に振った。


しばらくして、着信音は鳴り止んだ。


「アタシ、里奈さんの代わりにコンパ参加しますね。今夜は本当に迷惑かけちゃったし」


「マジで!すごい助かるぅ。樹ちゃん、ありがとう!今度、詳細の連絡するから」


里奈さんは心から嬉しそうに樹の手を取る。


樹もニッコリ笑って「はい、お願いします」と了承したのだった。


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