正しい紳士の愛し方
「ごめん、満。アタシ、これから用事があるんだよね。もう、切るね」
「ちょっと、いつ……」
満の制止も聞かずに一方的に通話を終了させてしまった。
きっと、また電話がかかってくる。
だから、樹はスマホの電源を一旦OFFにした。
満、ごめん……
何度も心の中で謝って、スマホを胸に抱きしめた。
樹は重い深呼吸を数回繰り返して気持ちを落ち着かせようとした。
スタッフルームの掛け時計はゆっくりと時間を刻む。
もう行かなきゃ……
同時に、百合さんの結構報告パーティーの事も頭に浮かんだ。
それも今夜開かれる。
大和さんはきっとパーティーに参加するはず。
映画みたいにカッコ良く彼女をさらったりするのかな。
あの二人なら様になっちゃうんだろうけど……
そんなバカなね――…
紳士な大和さんのことだから、スマートに笑って祝福するに違いなくて。
綺麗に箱詰めされた恋は永遠に彼だけのものになるんだ。