正しい紳士の愛し方



「まぁ、俺には関係ないけどさ。
ねぇ、これから二人でバックレない?見るところ、みんなでワイワイなんて気分でもなさそうだし、俺もちょうど息抜きしたいと思ってたところなんだ」


「いや……でも……」


シュウの誘いに樹は躊躇する。


人気モデルと二人きりなんてどうしていいのか分からない。


バックレるもなにも、そんなつもりでコンパに参加したわけじゃないのだから。


あくまでも里奈さんのピンチヒッター。


この前、店長を怒らせて迷惑をかけた借りを返してるだけ。


「いいじゃん。静かな場所で飲み直そうよ。俺も明日は撮影入ってるから、すぐ帰るし。少しくらいいいだろ?」


白い歯をチラッと覗かせた綺麗な笑顔。


さすがモデル。


清々しい笑顔とは裏腹に押しが強いシュウ。



樹は「……分かりました」と根負けした。



ココにずっといるより早く帰れるかもしれない。



もしかしたら、大勢の知らない人と飲み続けるよりこっちの方が気が楽なんじゃないか。



今の気持ちを優先させて、現状を安易に秤(はかり)にかけた。


「じゃあ、行こうか」


そう言って、先を歩くシュウの後ろを樹はついて行くことにした。



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