正しい紳士の愛し方


「また飲もう」



“もっと楽しい気分の時に……”



付け加えられなかった言葉だけ胸の奥にしまった。


「駅まで送ろうか?」


一緒に飲んでいた同僚の長野君が樹を気遣う。


樹はううん……と首を横に振って「大丈夫。ありがとう」とやんわり断った。


「じゃあ、また明日。お疲れ様でした」


「お疲れ」


「お疲れっす」


「お疲れ様~」


同僚に挨拶を済ませ、樹は飲み屋を後にする。




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