正しい紳士の愛し方
“俺の知ってるとこでいい?”
シュウの提案に賛成して、なにもかも任せっきりのまま街を歩く。
駅前通りを過ぎて、居酒屋街を横切り、お洒落なバーが軒を連ねる静かな場所に出た。
有名人ならタクシーでも手配しそうな距離を、シュウはずっと徒歩で進む。
気付けば、お洒落なバーも素通りしていて、その先にあるのは大人のホテル街だけとなった。
さすがの樹も少し不安になってくる。
今まで、こんな場所に用があることはなかったから。
「ごめん、樹ちゃん……」
樹が立ち止まる前にシュウの歩みが止まる。
「なに……?」
不安にかられながらも問い返した。
すると、シュウは急にその場にしゃがみ込んでしまった。
「お店まであと少しなんだけどさ、調子悪くなっちゃったみたい……。さっき、女の子たちと飲み過ぎたかな……」
シュウは下を俯き、気分が悪そうに頭を抱えている。
「だ、大丈夫……?タクシー呼んで、もう帰ろう……」
樹はタクシーを手配しようと慌てて大通りの方へ行こうとした。
しかし、それを引きとめたのは他ならぬシュウ自身。