正しい紳士の愛し方
いつもピシッとカッコ良く着こなしているスーツもネクタイも乱しちゃつてさ……
シャツも出てるし、走ってたのが丸分かりだよ……
ホント、なんで来たりしたの……?
放っておいたら良かったじゃん……
バカだよ、大和さん。
違う……バカなのはアタシの方だ。
「なんだよ、オッサン……」
うずくまっていたはずのシュウがいつの間にか立ち上がって怪訝そうな顔をしている。
「俺、まだピチピチの三十代なんだけどな……。まぁ、いっか。
それより、腹痛はもういいの?」
笑っているのにしたたかな態度。
大和さんの得意技。
それは、シュウの気分を逆撫でした。
「うっせー、オッサンには関係ねぇだろ。行こう、樹ちゃん」
シュウの手が樹に触れようとした瞬間、それを阻むかのように大和さんが押し返す。
「たしかに、君が腹痛で路上にのたうち回ろうと微塵も興味は無いんだけど、俺はこの子に用があるんだよ」
樹は体がグッと引き寄せられ、大和さんの腕にスッポリおさまる。
守られてるみたいでドキドキした。