正しい紳士の愛し方


「用ってなんだよ……」


「髪切ってもらう約束してるんだ」


大和さんはサラッと告げた。


男女の間に横入りするにはあまりに滑稽(こっけい)な理由。


案の定、シュウもフッと鼻で笑って「くだらねぇ」と吐き捨てた。


「そんなもん誰だっていいだろう。なんなら、一流の美容師を紹介してやろうか?」


大和さんは即答で「結構」と断る。


「彼の体調も悪くなさそうだし、おいとましようか」


「う、うん……」と樹は促させるまま。


「ちょっと待てよ!」


シュウは大和さんの肩をつかみ、強引に振り向かせる。


その瞬間、拳を振り上げて「……この野郎っ」と殴りかかった。


「キャッ……!」


樹はおもわず両目を覆う。



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