正しい紳士の愛し方



大和さんはいつもの柔らかい笑顔をみせて答えた。


それでも、樹はなんだか腑に落ちなくて「でも……」と食い下がる。


「そんなにあの男が気になる?」


「そんな事ないけど……」


「じゃあ、よしとしてよ。いつまでも他の男の話をされるのはいい気しない……」


大和さんはムッとして言った。


問い質されて困った顔、子どもみたいに拗ねた顔……


こんな大和さんは初めて。


なんだか可愛くて、愛おしくて、せっかくの決意が鈍ってしまう。



ダメ、ダメ、ダメ……!



気を抜くと姿を見せたがる煩悩。


頭を振って散らす。


「大和さん、今日は百合さんの結婚報告パーティーに行くんじゃなかったの?」


樹が問うと、大和さんは「そうだな。スケジュールに組み込んであったよ」とアッサリ認めた。


「なら、何でこんなとこにいるんですかっ……?」


「樹ちゃんの事が心配だったから。さっきも言ったけど……この間のこともあったし、電話繋がらないしね」


「そんな理由でドタキャンしちゃったの!?百合さん、きっと怒ってますよ!めちゃめちゃ怒ってますよっ……!」



なにそれ……



全部アタシのせいじゃん。



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