正しい紳士の愛し方


駅に向かってひとりきりで歩く。


賑やかな場所で飲む気になれなくて先に出てきたはずなのに、急に人恋しくなって。


ポケットに入ったスマホを不意に取り出す。


真っ暗な画面。



こう都合よくいかないか……。



白い息が澄んだ空気に溶け込んだ。


スマホをポケットにしまおうとした時、ブーッとバイブが震えてメールの受信を知らせるランプが点滅する。


『久しぶり。元気してる?』


メールの送り主は親友の満だった。


バリバリ元気だよー。+.。ヽ(*>∀<*)ノ。.+。』



違うよ……。



元気じゃないんだ……。



気持ちを偽るのは思いのほか辛くて、本音が出てしまわないうちに送信ボタンを押した。



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