正しい紳士の愛し方
「そんな事あるよ。樹ちゃんと出会って、一緒に過ごしてて、百合への想いも甘酸っぱい初恋になりつつあったんだよ。それぐらい、君といる時間は穏やかで楽しかったから。
まさか、あんな未練がましい気持ちを吐露してたなんて夢にも思わなかった。本当に穴があったら入りたい……」
今、彼が紡いでいる言葉の一つ一つが真実なんだ。
嘘偽りのない正直な気持ち。
「百合さんの事、今でも好き……?」
聞いてどうなるものでもないのは百も承知。
それでも聞かずにはいられなかった。
今ならちゃんと受け止められる気がする。
「嫌いになれない――…これが俺の気持ちに一番近いかな。どんなに絶望させられても、多分これだけは変わらない」
「そっか。大和さん、ちゃんと答えてくれてありがとうございます」
樹はペコッと頭を下げた。
「こちらこそ、ご静聴どうもありがとう。さぁ、もうすぐ着くよ」
大和さんは器用なバンドルさばきで車を駐車させていく。
少し先には雰囲気のあるガーデンレストランが見えた。
闇夜を照らす柔らかい暖色系の照明。
「さぁ、行こう」
駐車を終えた大和さんが先に車からおりる。
樹もそれに続いた。