正しい紳士の愛し方


急なことで樹は驚いた。


大和さんはどうするんだろう……という心配も要らぬ世話だったみたい。


乱れていた服装もいつの間にか整えていて、そこにはいつものきちんとした大和さんが立っていた。


「ご紹介に預かりました、高津 大和です」


動揺した姿など微塵も感じられない。


急なことにも堂々とスマートな振る舞いができる。



アタシは凄い人を好きになってしまったんだ……



今までに幾度となく思ってきたことを、また今日も感じてしまった。


もうやめるって決めたのに、彼の全てがそれを許してくれないみたい。


「まずはご結婚おめでとうございます」


大和さんは言い辛いはずの台詞をサラリと口にして、浅く頭を下げた。


「大和、ありがとう」


「Thank You very much . 」


百合さんと新郎の男性がほぼ同時に返事をする。


百合さんは国際結婚をするらしい。


長く海外に滞在していたようだから、ごく自然なことだ。


旦那様はハンサムで優しそう。


大和さんには負けるけど。


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