エリート上司に翻弄されてます!
顔を見なくても、言葉だけで私は縛られているのかもしれない。
こんなことを言われて気にせずに居られる人なんているわけない。
それが乾先輩からだなんて、私は……
私は本当に彼から愛されている。
そのことを身をもって感じると一気に体が熱くなった。
気にしていなかったわけじゃない、だけど未だに自覚がなかったというだけ。
彼からの愛を全身で感じられる心を持っていなかった。
「深桜ちゃんがいなくなってから家に帰っても1人だし、ご飯作る気も起きなくて体調崩すし、朝起こしてくれないから寝坊して慌てて家出るし、全然髪の毛とかセットする時間ないし」
「っ……」
「最悪だよ、俺が壊れる。俺が作り上げてたもの全部壊れる」
まるで私のことを責めるような言い方をする彼。
普段の彼からするとあり得ないことだ。
じゃあ今回体調を崩したのって、私がこの家から出て行ったことが原因なの?
「深桜ちゃんがいないと、駄目なんだ」
完璧な彼が、私のことを求めている。
そのことが私は嬉しくてたまらなくなった。
嬉しいのに、そんなこと考えてはいけないって押さえ込むような私の気持ちの行方は何処なんだろう。
気持ちの悪いそのぐるぐる渦巻く気持ちが、収まらない。
私のことを好きだと言う彼は、一体どんな表情をしてるんだろう。
見てはいけないのに、見たらもう私は逃げられなくなるのに。
なのに、その好奇心に勝てない私の決心は。