エリート上司に翻弄されてます!
「先輩……」
彼の真っ直ぐな自然と目が合った。
熱で目元を潤ませている乾先輩は私の全てを奪っていった。
「もう絶対手は出さない。好きって言わない」
「……」
「だから」
"側にいて"
消えるような声で呟いた彼は倒れこむかのように私の方に顔を寄せた。
言葉通り、彼は私の手を取るだけで体を抱きしめることはなかった。
だけどそれだけで私は身動きが取れなくなるほどに彼に縛られている。
知らぬ間に彼に依存してしまっている自分がいたことに気が付いた。
そしてそこには私に依存してしまっている彼もいる。
こんな2人が一緒にいたら、互いに駄目になっていくのなんて分かりきっていることなのに。
それなのに私は、今の彼を、
「は、い……」
今の彼を拒むことなんて……
そんなこと、出来るわけがないんだ。
もうこの人の罠にハマってしまった時点で、心がこの人から離れようとしてくれない。
そんな自分が憎いのに、何処かで愛しく感じていた。