エリート上司に翻弄されてます!




私が美味しいと言ったことで得意げになる彼を見ながら、「この人この前まで熱で倒れていた人とは思えないな」と呆れた気分で思った。

乾先輩と再び暮らし始めて3日が経った。
彼は私がいないと1人で起きれないと言っていていたが、あれから私が起きる前に起きていることの方が普通になった。

朝ご飯も彼が作ってくれている。
私はそれをありがたく食べているんだけど私が作るよりも普通に美味しいからいつも彼は我慢してくれてるんじゃないかと不安になった。

あれから乾先輩は私に好きだと言ったことはない。

乾先輩は私よりも先に家を出て行く。


「じゃあ戸締りよろしくね」

「は、はい」


行ってきます、と微笑むと彼はそのまま家から出て行ってしまった。
いつも通り、いつも通りなんだけど。

いつもよりも、何かが足りない。


「(私がこんなことを思っていいわけがない……)」


私がちゃんと答えを出さなかったから、だからこんなことになっているんだ。
きっと乾先輩ならどんな答えだって受け入れてくれたはずだから。

私は、今の彼との関係が崩れるのを恐れていたんだ。

何かが足りないと思うのは、許されることじゃない。

だけど、


「(違う……)」


お互い求めていたものはこれじゃない。それはハッキリ分かる。



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