エリート上司に翻弄されてます!
「だけど、兄妹は恋出来ないじゃないですか……」
兄妹はお互いを恋愛対象と意識することはない。
ただ、仲良しだねっで終わる。
それがどれだけ平穏で素晴らしかったか、今ならその大切さを私は分かる。
とにかく、今はそうじゃない。
「じゃあ、言えば?それ」
「え?」
「兄妹に戻りたいですって。そしたら向こうもちゃんとそうしてくれるんじゃない?」
「……そうですか、ね」
「……まぁ、1人じゃ無理だろうけど」
日高さんはまたジョッキの中身を空にした。
いつもよりも饒舌なのはお酒が入っているからなのかな。
何で、この人といると思っていることが全部口に出ちゃうんだろう。
そこまで私も向こうも心を開いているってわけじゃないのに。
本当に不思議。
「それでアンタがいつまでもあの女に嫉妬してたらマジで性格が悪い女だけどな」
「うっ……」
彼の言葉が鋭い棘のように胸に突き刺さった。
そうだ、それで乾先輩にはそれを強要してるくせにわたしが駄目駄目だと何も意味ない。
ずっと逃げてちゃ駄目だ。彼と桐乃さんが一緒にいても何とも思わない気持ちを持たなくては。
「出来るんでしょうか、私に」
不安になって吐露すると彼は「知らないよ」と冷たく反応した。
それが突き放されたように感じて、ぐすんと涙ぐんだ。
今まで溜めてきたものが溢れるように私は泣き声を上げるとそれをお酒の力で紛らわそうとジョッキを掴んだ。
「ちょ、アンタ!それ俺のやつっ……」
「ん、ん」
目の前のジョッキの中身を全て飲み干すと私はまたテーブルに俯せて泣き散らした。
遠くの方で日高さんが「度数高いやつだぞ」と呟くのが聞こえる。
それを最後に私の意識は途絶えた。