エリート上司に翻弄されてます!




関わらなきゃよかったな、本当。

すると綾瀬の鞄の中から何かの音が聞こえてきた。
何の躊躇もなく手を突っ込むと震えるスマホを捕まえた。

画面に表示されていた名前を見て俺は顔をしかめる。
が、俺はどうにでもなればいいとやっつけて通話をタッチした。


『深桜ちゃん?良かった、今何処?』

「……」


普段とは全然違う乾さんの声に少しばかり戸惑う。
深桜って誰だ……あぁ、こいつの名前か……

返事をしないままでいると電話の奥から「深桜ちゃん?」と連呼する彼。
可哀想になって仕方がなく声を発した。


「日高です」

『……は?』


一気に声にトーンが下がる。
この変化、自分で気が付いているのか。


「今マンションの下にいます。出てきてもらえますか?」

『……何言って』

「知ってるんですよ」


綾瀬が風邪引いてもいいんですか?、と言うと彼は黙ったまま通話を切った。
あんな焦った彼の声を聞いたのは初めてだった気がする。

そんなに大事なのか、この女が。

俺にはよく分からない。




< 188 / 343 >

この作品をシェア

pagetop