エリート上司に翻弄されてます!
俺は先程まで居酒屋で泣きじゃくっていた綾瀬のことを思い出した。
「これは余計なお世話かもしれないんですけど」
こいつ、自分の気持ちを伝えられないとか言ってたな。
「好きな女泣かさない方がいいよ」
そう言うと彼が目を見開いた。
「アンタと兄妹に戻りたいって言ってた」
「……兄妹?」
「前みたいな関係ってこと」
俺はよく知らないけど、と後付ける。
「好きだったらそうしてあげれば?付き合ってもないのに束縛してどうすんの」
「……」
て、もう関わりたくないとか言って俺は何口出しているんだか。
そんな疑問を抱える自分の行動に呆れると煙草の火を消した。
するとずっと黙ってた彼の口が開く。
「そうだな、何縛ってんだって思うよ」
「……」
「だけど、そうしないと深桜ちゃんは俺から離れる」
そう言った彼の表情は、ただ切なさだけが募っていた。