エリート上司に翻弄されてます!
「みーおちゃーん」
「……」
乾先輩は家に帰ってくると構わず私に抱き付いてきた。
大丈夫、お酒は入っていない。いつも通りだ。
いや、いつもよりもウザさ加減が増しているようにも感じる。
「もう色んな人に気を遣うし、覚えること多いし、移動多いし。何この仕事、地獄」
「責任感とか、周りからの重圧的なことですか?」
「そう、それを日々感じて仕事してんの」
もはや営業かと思うよね、と抱き着く強さに力がこもる。
私はそんな彼の頭をゆっくりと撫でる。
まるで大型な犬を宥めているかのように。
こんなのもまるで前に戻ったみたいだな。
乾先輩は私のことをもう意識していないからこんなことができるんだろうけど。
私は乾先輩がどんな仕事をしているか、詳しいことまでは分からないけど、
そういうプレッシャーを感じるというのは彼がそれだけ今回の仕事に力を入れているということの証だ。
「先にご飯にします?」
「……うん」
ほら!、と背中を叩くと彼は力無しに体を起こした。
私は笑っていると彼も安心したように笑う。
私がこうして笑っていることで彼も笑ってくれるならそれでいいと思う。
きっとこの関係がベスト。
だから今は彼が求める私でいようと思うんだ。