エリート上司に翻弄されてます!
夜、不意に目が覚めて水を飲もうと廊下に出るとリビングから光が漏れていた。
時間はもう夜の2時を回ったくらいだった。
私がそっと中を覗くと「え?」と声を漏らす。
「先輩?」
「ん、どうしたの深桜ちゃん?」
彼はテーブルに企画の資料の紙などを並べてパソコンの画面を見つめていた。
私に気が付くとそれから目を離し、驚いたようにこちらを見る。
「どうしたのって、先輩こそ。もしかしていつもこんな時間まで仕事を?」
「あー、丁度色々仕事溜まってて」
そんなに忙しかったんだ。なのに私何も知らなくて。
私はそんな彼に近付いて隣に腰を下ろすと乾先輩は一瞬だけたじろいだ。
「私が見ても大丈夫ですか?」
「あ……うん」
「……」
開発の内容とか、企画書の手伝いとかはしているから分かっているけど、こうやって色々な企業との連携で1つの商品が生み出される。
乾先輩は今その手綱の部分を担っているんだ。
大変そうですね、と呟くと「そうなんだよ!」と、
「マジで全然仕事終わらないから寝る時間が確保できなくて!美容に1番大切なのは睡眠時間を確実に確保することなんだ!あぁ、自分のことを犠牲にしてまでもこの仕事をやる必要があるのか!いや、あるわけがない!」
「ありますよ」
「目にクマ出来るし肌もボロボロだし……今の俺を俺は愛せないんだ。美というものは自分が愛さなければそれは美じゃなくなる」
「……前も言いましたけど」
私はそんな彼の側から腰をあげる。
「私は先輩の中身しか見てませんから。自分の身を犠牲にしながらも仕事と向き合う先輩の姿の方が普段の完璧な先輩より格好いいと思いますよ?」
そう告げるとキッチンへと足を運んだ。
元々の目的であったコップに水を注ぐと乾先輩がパソコンの前で固まっているのが見えた。
「どうかしました?」