エリート上司に翻弄されてます!
涙の行く先
隣に立っていた宮根さんが大きく息を吸い込んだ。
「いい旅行日和だねー」
「天気いいですしね、明日もあったかいそうです」
「本当、この日のために仕事頑張って気がしてならないよ」
とか言って昨日は夜遅くまで働いてたんですけどね、と自分で自分の肩を揉みながら彼女は遠くを見つめる。
私はそれに乾いた笑いでしか返事が出来なかった。
あれから数週間、無事に新商品の開発も終わり、私たちは他の部署に遅れて社員旅行を行うことに。
行き先は神戸で今日の夜は豪華クルージングディナー。
しかし今日まで本当によく働いた。
「よーし、そろそろバス来るから移動するぞー」
引率係の水川先輩の声に反応すると私は辺りを見渡した。
「あの人どこに行ったんですかね」
「あの人って乾さん?さっきまでそこにいたよね」
「……乾なら」
あそこだ、と水川先輩が指差した方を向くと乾先輩が鞄2つにもなる大荷物を1人で運んでいるところだった。
それを見た宮根さんは「あちゃー」と、
「何あれ、何が入ってるんだろう」
「毎年の恒例だからな」