エリート上司に翻弄されてます!




そう微笑まれて私は「そ、そうですね!」と彼に背中を向ける。
この前のアースデイでのことがあってから、何故か彼の笑顔を見ると顔が真っ赤になる。

別に2人の旅行とかではないのに何を私は意識してるんだろう。
これじゃあまるで私が乾先輩のことを好きみたいだ。

いや!そんなことは絶対ない!
こんな自分の見た目にしか興味がなくて一泊の旅行で鞄をパンパンにさせてる男になんか恋なんかしていない!

私はいつだって正常だ。


「(だからこうやって彼が周りの人に呆れられてるのを見ると安心するのかもしれない……)」


あの美容馬鹿は放っておこうということになり、私たちはバスへと乗り込んだ。

今回は開発部ともう1つの部署の合同で行われる。
小牧のいる人事部はもう終わらせてしまっているようで今回は一緒に行くことはできなかった。

だけど楽しい旅行になったらいいな。

そう思ってバスの外の風景を眺めていると黄色い歓声が飛び交った。
前を見ると乾先輩がバスに入ってきたようだ。

あの重い荷物で苦労していたからか、乗るのに時間がかかり、もうあまり席は残っていなかった。
乾先輩は私のところまでくると「あ、」と、


「綾瀬、ここ空いてんの?」

「え!?」


そう指差したのは私と隣の席。
通常運転でぼっちであった私の隣は誰も座っていなかった。

私は鞄を退けながら戸惑った。


「えっと……す、座りますか?」




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