エリート上司に翻弄されてます!
「日高さん?なんで?」
「……座る席がなかったんだよ」
「乗るの遅かったですよね、どこか行ってたんですか?」
「別に、煙草吸ってただけ」
なるほど、確かに少し匂いするかも。
それでも彼が隣に座ってくるなんて珍しいし貴重だと思う。
後ろの方の座席で盛り上がる女性たちの声を耳にしながら私たちを乗せたバスは神戸を目指して発車した。
私は鞄の中から飴を取り出すと日高さんの前に出す。
「食べますか?」
「……ん」
彼は黙ってそれを受け取ってくれた。
何だか珍獣に懐かれたみたいで嬉しい。
「日高さんもお疲れ様でした。ここ最近大変でしたよね」
「そりゃそうでしょ、ていうか終わったのここ2、3日前じゃん」
「あはは、確かに。でも日高さんが社員旅行に参加するなんて意外ですよね」
普段あんまり人と関わるの嫌がっているのに。
でもそれは初期の印象で、最近の日高さんは私から見ても親しみやすい雰囲気になってきた気がする。
私もこうして普通に話せるようにはなった。
あれから飲みに入ってくれないけど。
「まぁ、1番忙しかったのってあの人だと思うけどね」