エリート上司に翻弄されてます!
私、気付かない間に乾先輩のことを好きになっていたんだ。
どうしてこんなに涙が溢れるのかは、これは失恋の涙だからだ。
今から気が付いたって遅いのに。
「もう間に合わないのに、全部私が悪いのに」
「……」
「分かってるのに悔しいんです」
きっと今更彼に気持ちを伝えたとしても嫌われてしまうだけだと思う。
今ならあの時の乾先輩の気持ちが分かる。
気持ちを隠すのって、苦しい。
「アンタって馬鹿なの?だからあの時言っとけばよかったのに」
「……」
「顔ぐちゃぐちゃで酷いよ」
「すみませっ、汚いですよね」
「いや、そこまでは」
言ってないけど、と彼は口にしていたけど私の耳には届かず、何とか涙を止めようとして両目を擦った。
でも擦れば擦るほどまた溢れてきて、また擦れば日高さんの手に掴まれた。
「やめろって、泣いたってバレるよ」
「っ……」
ヒリヒリした目で日高さんを見ると彼はそんな私のことを真っ直ぐと見つめていた。
遠くから花火の音が聞こえる。でもそれも小さくなっていった。