エリート上司に翻弄されてます!
先輩は本当に犬みたいな性格をしていると思う。人懐っこく、明るいこの性格からこの会社では部署を越えるほどの人気がある。
例えるならゴールデンレトリバーだろうか、体大きいし。全然しつけなってないけど。
更にこの人には問題があるのだが。
何でこの人こんなに鬱陶しいんだろう、と溜め息を付くとフロアの入口の方から「乾さーん」と甲高い声が聞こえた。
視線を向けるとそこには5人程の女子が集まってこちらを見つめている。
「例のあれですか」
「あれだね」
「俺のファンをあれ呼ばわりするのはどうかと思うんだけど」
そう言われてもこうも毎日お昼休みに乾先輩を迎えに来られるとこっちもストレスが溜まる。
乾先輩はお昼休みは毎日自分のファンの子達とご飯を食べることになっている。因みにこの会社には彼のファンクラブもあるらしく、かなりの女性社員が所属しているらしい。
こんな性格をしていてもやはり顔はイケメンである為女性にはこれ以上なくモテる。それが何故か私は気に食わないでいた。
そう考えていると自然と仏頂面になっていたのか、乾先輩はそんな私の顔を覗き込んで、
「ん?もしかして綾瀬も俺とランチがしたいの?しょうがないなぁ、可愛い後輩の為だ」
「あ、私友達と約束あるんで」
誰があの女たちの中に入るか。
乾先輩は「折角この俺が誘ってやったのに。後悔するぞ!」と私に言うとそのハーレムに向かって歩き出す。
そして彼らがこのフロアから出で行くとその場にいた全員が息を吐き出した。
「何であの人ってモテるんですか?」
「この部署にいるやつは全員そう思ってるよね」
「あの人一応ここのエースなのに」
「仕事は熱心だからな。本当に惜しいよな、全てが」
「……」
水川先輩の意見に同意。