エリート上司に翻弄されてます!
流石の俺も負けちゃったな、と言うと彼は私の腕を引っ張って引き寄せるようにして抱き締めた。
力一杯抱き締める彼は私の後頭部に腕を回して身体中をまるで埋めるかのように包み込んだ。
「好き、大好き」
「っ……」
「大好きだ」
まるで大型犬に乗っかられているように後ろへ倒されそうな程の勢いのあるハグに私は耐えるのに必死だった。
それに周りにめちゃくちゃ人がいるのに、これはちょっと恥ずかしすぎるのでは。
それでも乾先輩は気にも入っていないのか、「深桜ちゃんー」とスリスリと私の頭に顔をなすりつける。
すると突然何かを思い出したのか、「ハッ」と声を出して顔を上げた。
「じゃあ深桜ちゃん、また俺の家戻ってきてくれるんだよね?」
「……」
は?
「え、ちょっと待ってください。何でそういうことになるんですか?」
「だってそうじゃん。深桜ちゃんは俺が好きなんだから引越す理由もなくなったし?」
「いや、戻る理由もないんですけど!私の家の修理終わったし!」
「えー、でも俺が深桜ちゃんのご飯食べてるの嬉しいってさっき言ってたじゃんー」
「あ、あれは……その時の話で」
いかん、なんか会話の方向がおかしくなってきている。
しかし乾先輩は興奮しているのか、私の言葉を全く耳に入れようとはしてくれない。