エリート上司に翻弄されてます!
会社に着くと私は周りに怯えながら部署へと向かう。
もし昨日の駅での出来事がこの会社の誰かに見られていたら既に噂が立っていてもおかしくはない。
しかしそんなこともなく、誰からも声をかけられないまま何とか仕事場へとたどり着いた。
「おはようございます」
中に入るといきなり乾先輩と目が合った。
彼は軽く微笑むと私に向かって手を振った。やめなさい!バレるでしょうが!
あの男、私の言ってること全然理解出来ていないな!
帰ってちゃんと躾直さないと駄目だ!
そんなことを考えているとドンッと肩を誰かから押された。
「あ〜や〜せ〜」
「っ!?」
宮根さんが出勤間もない私と肩を組んで顔を近づけて来た。
な、なんか顔が凄く怖いのは気のせいかな?
「昨日勝手に帰ってさー、あの後私たちがどれだけ大変だったかー」
「っ……ご、ごめんなさい!」
そうだった!私あの状況の中乾先輩のこと迎えに行ってそのまま帰っちゃったんだった。
これは数回謝ったぐらいじゃ許してもらえなさそう。
と、
「なんて嘘〜」
「え?」
「あの後日高さんが来てさー、残ってる仕事全部手伝ってくれて」
「そ、そうなんですか?」
「本当に凄いよあの人。綾瀬も後でお礼言っときなね」
「……」
そのこと以外にもお礼を言わなきゃいけないことあるんだけどな。
私は自分のデスクに着くと鞄を置きながら日高さんの姿を探す。
まだ来てないのかなと思っていると視界の端にいた乾先輩が「んんっ」と喉を調子付かせて立ち上がった。
「ったく、皆俺が帰ってきているというのにノーコメントとは。久しぶりに俺の姿を拝めて感激して声が出ないってか?」
「わー、始まったよまた」
「誰も帰ってくるの待ってなかったしな」