エリート上司に翻弄されてます!
乾先輩は私を挟むようにして彼にお土産を手渡す。
「あ、でもお前岡山来たんだっけ?じゃあいらないか?」
「……ふっ」
「何だよ?」
「いや、全然余裕ないなって思って」
日高さんが笑いを堪えるようにして手を口元に当てた。
私は背中に乾先輩を乗せながらそんな彼を見つめていた。
「どういう意味?」
「別に、アンタは嫉妬深いなって話だよ」
「わっ……」
そう言った日高さんが私の腕を掴んで前へと引っ張る。
突然のことで踏ん張ることが出来なかった私はそのまま彼の方へと引き寄せられた。
と思ったら今度は私の首に後ろから腕が回ってきて体が傾いた。
気が付くと私は乾先輩の腕の中に逆戻りしていた。
ちょっと待って、この体勢は可笑しい!こんなの周りに見られたら大変なことになる!
私の頭上で睨み合う2人に「あ、あの!」と声を掛けるも見事に無視される。
そして、
「勝手に触んないでもらえる?」
「何で?」
「深桜ちゃんはもう俺のものだから。俺の彼女だから」
隠すつもりなど全くないかのような大声でそう言った乾先輩に周りの人が驚きの声を上げていくのがわかる。
私はそんな彼の腕の中でやっぱり彼に我慢という言葉は理解出来なかったかと溜息を吐いたのと同時に死を覚悟した。