エリート上司に翻弄されてます!
ドアを開けたらいきなり大柄な男が抱き着いてきた。
その力は強く簡単には離れてくれない。
「あー、今日も疲れたー。深桜ちゃん癒してー」
「重いいい!家まで私を疲れさせないでください!」
「課長が俺のこと扱き使うの。酷くない?お陰で顔むくんじゃった。朝から晩まで美しいのが俺なのに」
「はいはいはいはい」
軽くあしらうと彼は「深桜ちゃんが冷たい……」と呟いた。
これ以上ややこしくなる予感がしたので仕方なく彼の柔らかい茶髪に手を伸ばす。
「よしよし、先輩は今日もお仕事よく頑張りました。いい子いい子です」
「もっと撫でて」
「はいはい、夕御飯は煮込みハンバーグですよ」
「ハンバーグ好きぃ」
乾先輩は少し顔を上げると私に向けて子供のように無邪気に笑った。
やはり性格がアレだと思っていてもこの顔に至近距離で微笑まれたら何も言えなくなる程ときめいてしまう。
深桜落ち着いて。この人の中はただのナルシストチャラ男よ。
乾先輩は漸く私から離れると「いい匂いするー」と部屋の中へと進んでいく。
その背中を見て私は深い溜息を付いた。
乾先輩は今日の頑張りを頭を撫でで褒めないといつもああだ。本当に乾先輩といると自分が飼い主になったみたいに思える。
キッチンへと戻ると彼は鍋の蓋を開けて「おおー」と声を挙げた。
「美味しそー、腹減ったー」
「先に食べます?」
「いや、先風呂入りたい。深桜ちゃん大丈夫?」
「はい、お腹減ってないんで」
いいですよ、と言うと「じゃあ失礼しますー」と彼はネクタイを外しながら寝室の方へと歩いて行った。
今のとか彼のファンの人が見たら発狂ものなんだろうな、と夕御飯の準備を続行した。
乾先輩と彼の家で同居を始めて3ヶ月になる。