そこには、君が
「なんの挨拶だよ」
敵意むき出しの大和は、
ジリジリと徹平さんに詰め寄る。
徹平さんは動こうとはせず、
大和を迎える気でいるみたい。
だけど。
「徹平さん!」
私が耐えられない。
そう判断した結果、
強制で家に帰ることに。
「今日は本当にありがとうございました。楽しかったです!また、連絡しますね!おやすみなさい」
早口でまくし立て、
観念したのか状況を読んだのか。
徹平さんは何も言わずに、
笑って一言。
「じゃあ、おやすみ」
視線が私に向けられていないのは、
少し気にはなったけれど。
もうそれどころではない。
「じゃあね」
去った徹平さんを見送ると、
そそくさと大和を避け、
家へと向かう。
「待てよ、明香」
分かってはいた。
いつかは言わないと、
こうなってしまうことを。
だけど、どうしても言えなかった。
「なんであいつと一緒にいんだよ」
言えばしつこく追求。
何をしでかすか分からない。
そんな男に、おずおずと、
言えるかっての。
「聞いてんのか明香」
私が無理に閉めようとしたドアを、
力任せにこじ開け、中に
勝手に入る横暴男。
「なんでいたんだよ、あいつと」
やっぱり、私は頭が悪い。
「付き合ってるからに決まってるでしょ」
穏便に済ませればいいものを。
また、状況を悪化させるような、
言い方をしてしまう。
「は?付き合ってる?」
「そう。だから何?何か悪いの?」
喧嘩口調になっているのに、
全く気付かずに声を荒げる。
うるさいんだよ、大和。
私が何をしようと、
私の勝手じゃない。