そこには、君が






「大丈夫かな、この服…」





「いや似合ってるよ!絶対徹平さん喜ぶって!」






学校を後にした私たちは、


そのままショッピングモールへ向かった。


元々凛との話で目当ての店はあったため、


場所に迷うことはなかった。


タイトなワンピース。


ボディラインは嫌ほど目立つ。


それでもこの服を選ぶのは、


少しでも大人に見られたかったから。








「じゃじゃーん!」







試着室から凛の掛け声で出ると、


徹平と春太さんは一瞬動きを止めた。


まずかったかな。


様子を伺うも怖くて顔が見れず、


俯く私に。







「すみません、これください」







徹平は店員さんに声をかけた。


そのまま着て行きます。


そんなことも伝えてくれた。








「怖い」






「え?」






「似合いすぎ」







これ着て、と。


徹平は私に自分の上着を着せた。


スーツっぽいスタイルの徹平は、


黒いシャツにベストを着たスタイルに変貌。


あれもこれも、何もかも格好良い徹平に、


私は度肝を抜かれてしまっていた。








「でも見せたくない」






「じゃあ、脱ぐ?」






「いやいい。俺が脱がすから」








きっと誰にも聞こえない、


私だけに聞こえるよう、


耳元でそう囁いた。


今日も今日とて、甘い。


さっきの出来事が嘘のように、


徹平はちゃんと私を見ていた。


買い物を終え、店を出る。


3月とはいえ、この格好のせいで、


寒さが足元を覆った。









「自信無くなってきた」






「どうした?」







「この服を着る自信…」








お店に到着するなり、


途端に不安になってきた私。


だってこんなにタイトなワンピース、


着たことないし。


それにほら、足をこんなに


出したこともないのに。







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