そこには、君が
「明香ちゃん、友だち来てくれたよ!」
「は、はい…」
店に入る前に、徹平に上着を返した私は、
タイトワンピースを見に纏い、
ボディラインを見せている。
短い丈なのが気になって、
自然と手が裾に伸びていた。
「ごめんなんだけど、動けないから、中に案内してもらえる?」
「分かりました…」
話したことない人だけど、
きっと私の話を聞いているのだろう。
感じの良いこの人は、
大和たちを私に預けると、
続々と入ってくる客の対応へ向かった。
「明香、早かったね」
京也の気を遣った言葉に、
少し救われながらも、
笑顔を返せなかった。
素気ない素振りで、
うんとだけ言うと、
どうして良いかも分からず、
背中を向けた。
「どこ座っても良いと思うけど…」
どこが良い?と尋ねるつもりで、
後ろを振り返ると。
「好きに座る」
大和がそう言った。
そして私の顔に目がけて、
自分のジャケットを押し付けた。
驚きで不細工な声が出る私に構うことはない。
理由の分からない行動に、
私はただ驚くだけだった。
「可愛いじゃん」
先を行く大和の後ろに続く京也は、
私の頬に手を添えて、
真剣な表情で褒めてくれた。
ありがとうと返すだけで、
私の胸はざわついていた。
京也の声を聞いた時、私の視界は
既にもう違う人を捕らえていたから。
「こんにちは」
頭を下げるその子は、
数日前にマンションで会った子。
そして大和が否定しない、
謎の女の子。
その子もこの会のためかオシャレに着飾っていて、
京也の後ろを静かについて行った。
清楚という言葉がぴったりなほど、
綺麗でどこか儚げだった。
羨ましいと思った。
3人の背中を見て、
不思議とそう思っていた。