そこには、君が
「でも今日は楽しかったよ、すっごく!」
どうにかしないと。
そう思って私は必死に明るく努めた。
もう遅い。
そんなこと、分かっていた。
「ありがとう」
徹平は私に感謝を述べたけど、
本音はもっと別のところにあるのは、
痛いほど伝わった。
実際に大和と何かあったせいで、
こんなにも後ろめたい気持ちでいっぱいだ。
本当だったら徹平に触れたり、
手を繋いだり、それこそキスをしたり。
徹平で始まり、徹平で終わる。
そういうつもりだったのに。
今日だけはそうしてはいけないと、
私の中のもう1人の自分が危険信号を出していた。
「じゃあ、帰るね」
「こ、今度は私の家で、あの…っ、」
それはまるで、
言い訳をしているみたいだった。
私の焦り様がどう伝わったか分からない。
徹平はクスッと笑って、
私の頬に手を当てた。
「明香、好きだよ」
好きだよ、に。
私も、と答えた。
と思う。
「気をつけてね」
好きなのに。
この人を愛しいと思うのに。
伝えてはならない気がした。