そこには、君が






「春太さんと話した時に言ってたんだけどね」





「…うん」





「俺は無関係だけど、徹平は大変だと思うって」







目の前が真っ白になった。


どこかで否定していたこと。


あのニュースと徹平は、


無関係であるということ。







「細かくは言わないんだけど、そう言ってて…」






ごめん、と謝る凛。


そして少し涙目になっていた。


きっとずっとこの話をいつ言おうか、


悩んでくれてたんだろうな。


私は責任を感じている凛を、


必死に抱きしめた。








「何で凛が泣くの」






「分かんない。でも、心が痛くて…」







誰の言葉でもない凛の言うことに、


少なからず信用すると同時に、


信憑性が高くなった。


やめろと言った京也の言葉は、


どうにか処理出来たのに。


涙を流す凛の言葉が、


痛いほど刺さった。


苦しい。







「明日、会うことになってて…」






泣きそうな凛の涙につられて、


私は涙腺が緩んだ。


悲しいとかそういうわけじゃないけど、


どうとも言えない感情が私を襲っていた。







「だけど最近、外で会えてなくて…」






「…うんうん、」






「この前会った時と急に中で会いたいって言うし…」







見ないフリをしていた。


分からないフリをし続けた。


気付かなければ、


何事もなく居られると思ったから。








「分かんないよ、凛……」








言葉にすればするほど、


徹平を悪く感じてしまった。


まだ本人の口から何も聞いてないのに。


本当かどうかなんて、分からないのに。







「明日、ちゃんと聞いてみて」







「…でも、もし本当だったら、」







「それは、その時に考えよう。こんなモヤモヤしたまま、付き合ってても意味ない!ね?」







私を励ます凛の言葉が、


いつもに増して頼りになった。


凛がいると思うと、


心強かった。


そして浮かんだのは、


やっぱり暴君の姿だった。










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