そこには、君が
「徹、あと少しで戻ってくると思うから」
「徹…?」
「あ~、さっきの奴。待っててやって」
凛をお願いします。
そう言って頭を下げると、
イケメンスマイルを見せ。
「命に代えても」
なんてふざけて言いながら、
凛に手を差し出した。
戸惑っている凛に。
「警察、来てるかもしれないし」
今日だけは彼女でお願いします。
そんなことを言われ、
もう凛の目はハートだった。
また連絡するね。
そう言って、凛たちが出て行ってから、
約1時間が経ち。
「まじ眠みー」
「お腹空いたよぉ」
知らない人たちが、
ぞろぞろと室内に入ってきた。
どうしよう。
何だ、こいつって…。
「あれ?どちら様?」
なるよね、やっぱり。
「あ、私は」
なんて言えばいいんだろう。
お客です?違うよね。
高校生です?そんなこと言えないし。
匿ってもらってる?そんなこと…。
「え、誰かの彼女?」
嬉しそうに、
尋ねてくる男の人。
「いえっ…あの、」
「俺んだよ。近寄んな」
片割れさんが息を切らし、
音を立ててドアを開け。
群れる従業員らしき人たちを
掻き分け、私の目の前に現れ。
私をみんなから見えないように、
長くて大きな手で私を包んだ。
「徹さん、彼女いたんだ!」
「こんな可愛い子かよ。徹平、抜け駆けだろ」
みんなに囃し立てられる中、
頭上から聞こえてくる、
片割れさんの、ごめんの声。
私は必死に首を振る。
「急いで荷物取ってくるから。ごめん」
「謝りすぎです。…待ってます」
私を放すと、片割れさんは、
柴崎さんと同じように奥に行き、
着替えを済ませ、鞄を持って出てきた。